短編 | ナノ
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これが終わったら、またあのいつもみたいに……


きっと、無理なんだろう。


そう思って目を閉じまたマフラーを握りしめる。


目指すは、ただ一つの解放へ







その日のイタリアは雪が降っていました。



「あのさ、ギアッチョ」


「なんだヨシノ」



「今日はホワイトアルバム使わなくていいと思うんだ……ほら、解除解除」


「使ってねーよ!勝手にオレのせいにすんなッ」


買い出しという事でギアッチョと街を歩いていた時のこと。


白い雪が積もることからもわかるけれど、温度はとても低かった。

あんまり寒くないだろうと高くくってあまり厚着しなかったことに後悔を覚える。
ギアッチョの恰好を見た時点で、ああ寒いんだと理解しておくべきだったと本当に思った。
でも、今すぐにアジトに戻って装備を整え直すのは少し無理だ。



「首がもげる、寒くて首がもげる」


「寒くて首がもげたやつは見たことねェ。」


「ここに誕生しちゃうかもよ」



「………」



無視された。もう返しても無理と思われた。

呆れた顔でギアッチョは私を見ていて、視線がいたい。


まあ、ギアッチョに言っても仕方ないんだけどさこれ。



「……って、え?」


寒いと思いながらももう口に出さないようにして歩いていると、突然首に何か掛けられた。

本当に突然で何事かと思った。


「ちょ、ちょっと、もう変な言いがかりとか付けないから首は閉めないで!ホント謝るから」


「騒ぐな。別に殺すわけじゃねェーよ」


別に殺すわけじゃ、の時点で怖い。
そう思っていたけれど、気付けば首元は暖かい。


「……これで首がもげることはないだろ」



ギアッチョのしていたマフラーがない、私の首にあるのはマフラー。

つまり、これは



「え?いいの?」



「騒がれるよりマシだからな。」



「まあいいや、ありがと」



マフラーは少し長めで、ギアッチョが無理に巻いたせいで正直苦しかったけれどそれも気にならないくらいに嬉しかったし、暖かかった。



他愛のない会話、相変わらずよくわからない距離。

でも、あんまり気にならなかった。


少なくとも、自分の中でギアッチョは特別だったと思う。怒りっぽいし、怖いとかいう印象とかあったりしたけれど、意外とやさしいし。不器用なのかなー、とか色々考えていたら意識していた。

それに、こんな風になんやかんやで色々付き合ってくれる。嫌そうにだけど。



だからこんな日がいつまでも続けばいいと思っていた。

こんな距離のままいつまでも。



「……マフラーって洗っていいのかな」



「何か言ったか?」


「別に」







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