短編 | ナノ
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その日は岸辺露伴にとって随分と平凡で、いつもと同じように漫画を描いていると、ときどき幼馴染であるヨシノに茶々を入れられたりする日になるはずであった。




「露伴ちゃん暇。真面目に暇、暇で死ぬかも知んない。」


「君が今死ぬか死なないかという問題はどうでもいい。そんなに暇なら出ていったらどうだ?あと、そのちゃん付けをやめろ。」


「うわー、それ幼馴染に言う言葉じゃないわー。」


描いている途中に邪魔されるのが嫌なので、露伴はそんなに暇ならラジオを付けろとヨシノに言うと、しょうがないなぁ、描き終わったらちゃんと構ってよなどと言いながらヨシノはラジオを付けた。


「あら、同じ放送しかしてない。なんか外では大事件でもあったのかな」

どこかで聞いたことのある名前の人物の演説とやらが全チャンネルでやっており、つまらないと露伴は舌打ちした。

そんなこと私に言われても困るんだけどとヨシノは溜息ついた。

仕方なしに、その放送を聞くことにしたのだが

そこから聞こえてきた話は到底信じられないものであった。


『非常に残念なことなのですが本日地球は終わります。』


二人は日付を確認したが、今日はエイプリルフールではなかった。


「露伴、なんか人にドッキリかけられるようなことした?」


「僕がそんな人に恨まれるようなことするわけないだろ。君こそどうなんだ」


「いや、これ露伴の物だから、私にドッキリかけるとしたら犯人は露伴になるから。」


そう言いながらもヨシノは自分のケータイを確認している。

そして、一瞬目を見開き嘘だと力なくつぶやくと画面を露伴に見せた。


「見てよ、ニュース全部これ。」


「……地球終了のお知らせ。突然言われても困る話だな。」


「ドッキリじゃなかったよ。本当の話だよ。どうすんのよこれ」


「そんなことを僕に言われても困る。今日地球が終わるといわれて君に何かできるか?」


できるわけないじゃんと返すヨシノ。

正直なところ、二人は信じ切れていない。

言葉だけでそんなことを言われても、普通の人はそうなるだろう。



「………」


先程から色々言っていた割に、ヨシノは急に黙るとヘッドフォンを取りだす。

音楽でも聞いて気を紛らわせるためなのか、その体は震えていた。


露伴はと言えば、先程から家の外が騒がしくなってきたと思い窓の外を少し見ていた。


普段は見ないような大きな鳥たちが、空を覆い尽くしている。


空だけではなく陸も渋滞している。


地球が終わるというのに、どこへ行くつもりなのか。


ばかばかしい、とだけで済む問題でもないが露伴は窓の外を見るのをやめた。


とりあえず、次に世界の終了だとかいう話をかくことがあるとすれば今回の体験はとても良いといえるだろうと思いながら。


「……露伴、ちょっとこれ聞いてくれない?」


「は?」


「いいから」


そう言ってヨシノは露伴にヘッドフォンを無理やり付けさせ、iPodを渡した。


不明なアーティスト項目の、タイトル不明のナンバーと画面に映っている。

これを聞かせてどうするつもりなのかと露伴が思っていると、突然声がした。



『生き残りたくはないか?』







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