1 (1/3)
彼と出会ったのは人気のない夜の交差点。
赤信号に気づかず歩いた私は轢かれかけた。
いや、正確には轢かれていたはずだった。
「会ってから100回記念、おめでとう」
「どこもめでたくない。」
ピンク色の髪をした男が言った。
周りは雨が降り、私はメモ帳に感電死、とメモした。
「何回も何回もお疲れ様です。」
「冗談じゃない、止められるならやめている」
彼の名前はディアボロ、私が彼に出会ったのはつい一か月前、なにか抗争に負けた上に死んでも死んでも死ねない体質になったらしい。
怖い世の中になったものだとその話を冗談半分に聞いてはいたけど、今日で100回彼は死んだ。
話を盛るとかそういうことなく、本当に私の前では100回死んだ。全部めもった私が言うんだから間違いない。
死に方もかなり理不尽なものが多く、事故多発道路に出れば車が突っ込み、階段を上り下りすれば転落し、火を使えば焼死する。
ただの運が悪い人なら死んでいるけど彼は何度も死ぬから不運は何度も重なる。
死ぬと私の前から姿を消す時もあるけれど、大体数分後には帰ってきて少し話したりしているうちにまた死ぬ。
その数分の中でも違うところで死んでいるらしい。
「ディアボロ、死んだ時ってどんな感じ?」
何度も会ううちに何かの縁で仲良く(?)なったというかよく話すようになった。
ディアボロは不機嫌そうな顔をしながらも私の質問、会話を返してくれる。
「死の瞬間を繰り返すのだから死んではいない。だからよくわからない。」
「そ。」
一言返して本日感電死した彼を傘に入れる。
雷が直撃だなんてこと、めったにない気がする。
それでもすぐにぴんぴんして起き上がる彼はすごいな、と思う。
「死なない時ってないの?」
そんなに死にまくっているなら一度くらいは死にかけた、で終わったことはないのだろうか?
「ない。確実に死ぬ」
「へー。」
死ぬときは確実に死ぬのか、と思いそのまま口をつぐんだ。
相合い傘で道を歩く。
私はこの人が今まで何をして来たかは知らない。
抗争なんて物騒な事して、そんな呪いじみたことをかけられたということは結構なことをしたんだろう。
でも、何も知らない私には彼が可哀想に思えた。
「次はどうやって死ぬかとか恐くない?」
「もう慣れた。始めは抗おうともした、だがなんの意味もない。受け入れるしかなかった」
男の人の避けてと言う叫び声が聞こえ、傘が落ちる。
「101回目」
「だ…な……」
落下した鉄骨が彼と傘を下敷きに。
歩いていた人々の悲鳴、
また、彼は消えた。
メモ帳に圧死と書き、私は傘を置いてそのまま家に帰った。
明日は交差点に現れるだろうか、と考えながら。
- 5 -
≪ | ≫