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「生き残りたくはないか?それはどういう意味『時間がない、ここから一番近い丘に向かってくれ。まあ、生き残りたいならの話だが』」
ヘッドフォンから聞こえる声はとてもよく知る声で、こちらの話などそっちのけで話を勝手に進める。
「ヨシノ、これはどういうことだ?」
「どういう事だと聞かれても困るよ。なんでアーティスト不明何かあるんだろうと思って聞いたら突然……露伴の声が丘に向かえなんて言うんだもん。露伴、ドッキリだったなら今のうちに言ってね。」
「ドッキリも何もない、寧ろなんで僕の声なのか驚いているくらいだ。」
一体どういう事なのかは分からない。
だが、丘に向かえという言葉……地球が今日終了することと関係があるのか
「面白い、世界の終了に言った覚えのない言葉ばかり言う自分の声、こんな体験めったにできるもんじゃあない。やってやるよ、丘の上に行ってやる。」
ヘッドフォンをした露伴がニヤッと笑って言うと部屋のドアノブに手をかけた。
しかしドアを開けたそこで行動が止まる。
「……?露伴、行かないの?」
何事かと思いヨシノが声をかけると、
「行かないのと聞きたいのはこっちだ。君も行くんだろう?」
当たり前のように言う露伴に、ヨシノはえー、と言いながら立ち上がり
「巻き込まれた。」
というと
「最初に巻き込んだのは君だろ。」
と返された。
世界終了の日まで何してんだろうとぼやきながら、ヨシノは露伴に続いて外に出る。
「……でもいっか、世界終了まで露伴と一緒にいられるなら。」
「認めたくないが僕もそう思っている。」
「露伴が素直だ、こりゃあ本当に世界終了、いや地球が真っ二つに裂ける。」
「言わなくていいことをわざわざ言うな!」
道路に出ると、車で渋滞している。
いや、それどころじゃあない。渋滞だけならまだしも、暴れる人々がいれば泣いている少女が居る。
老若男女など関係ない。怒号と赤ん坊の泣き叫ぶ声。
しかし、二人が向かうのは全くの逆方向。
「これが世紀末ってやつか。めったに遭遇できるものじゃあないな。」
「いや、冷静にメモ取ってる場合じゃあないから。もっと緊張感を持って行こうよ。」
「緊張感があったからって何か変わるとでも思うのか?大体時間制限されているわけでもないんだぜ、ならこの光景をみた体験を有効活用しなくてどうする。」
「世界終了でもぶれないね、露伴は。」
そうヨシノが言った時、
『残りあと12分だ、走らないと間に合わないんじゃあないか?「そんなこと一言も聞いていないッ」』
ヘッドフォンからまた声がし、またこちらの話は一切聞かずそう告げた。
ヘッドフォンの声がまた黙ると、周りの悲鳴合唱がよく聞こえるようになる。
露伴は舌打ちをすると、ヨシノの手をつかんだ。
「走るぞ。」
「え?なんで突然」
「あと12分だとか言われたんだ突然。」
その声は明らかにイラついており、また理不尽なことをとヨシノが思うと走り出した。
あの丘へと。
このまま全てが終わるくらいなら、これくらいしか術はないから。
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