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それから数時間後、時間としては夜に私は吉良さんの家の前にいた。
「ヨシノ…?」
「あ、吉良さん。おかえりなさい……です。」
会社帰りと思われる吉良さんは一人。でもきっとどこかにあの人が居るんだろうな。
そう思うと心が少し痛んだ。
「急に来るとは思わなかったよ。あがっていくか?」
「いいえ、今日はこれを渡しに来たので。」
片手で、結構きれいに包装したつもりの箱を渡した。
「これは?」
「気に入ってくれるかわかりませんが、プレゼントです。できたら大事にしてください。結構一生懸命やったんで。」
結構なんてうそ。かなり。だ。
「手作りのもの?ありがとう。」
「手作り、とはちょっと違うかもしれません。あ、あんまりきれいじゃないかもしれません。思った以上にきれいに切れなかったんで。でも他は傷めないようにやったんで大丈夫…かな。」
もっとちゃんと切れ味のいいものを使えば痛くなかったと思う。いまさらだけど。
吉良さんは、一体何の事かといったような目で私を見る。
「そういえば、今日はそでの長い服を着ているね。手が見えなくて残念だ。」
「……ちょっと色々ありまして。」
「まさか、これを作る過程で傷でもついたんじゃ……ッ!?」
これを作る過程って言うのは間違いじゃない。
と、言うよりあげたものがこれだもの。
吉良さんは、私の左手を見て、絶句していた。
「吉良さん、手、好きなんですよね。」
すごく痛かったけど、きっと吉良さんは喜んでくれると思ったから。
私これ以上ほかに考えが思い浮かばなかったから。
「もし、この切り方じゃだめなら右手をあげます」
きっとその時も痛いかもしれないけど。
――あなたがきれいだねと言ったから
あなたにあげようかなって。
あの人よりも大切にしてもらえたら、嬉しいなって。
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