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その日は夜道、少し人通りの少ない道を通っていた。
心もとない街灯の光と偶に通る人、早く帰ろうと小走りで家に向かう途中、
吉良さんと、知らない女性が一緒に歩いていたのを見た。
最初はきっと、同僚の人だとか考えていたけれど、そんな雰囲気じゃあないことにはすぐに気付いた。
信じたくない光景に立ち尽くしそうになったけれど、私はその二人の後を付けた。
絶対にばれないように、こっそりと。
つけていくごとにどんどんと人通りの少ない場所になっていって、最後には裏路地のようなところに付いてしまって。
なんでこんなところまで来ているんだろう、なんて思っていたら
一瞬のうちに、女の人が居なくなっていた。
「……?」
わけがわからない。
さっきまで吉良さんと女の人、その二人がこの場にいたはずなのに。
ああ、私が存在を信じたくなくてけしちゃったとか?
「あぁ、やっぱりきれいな手だ。」
独り言、の様でそうじゃない吉良さんの言葉。
手に持っているのは、手。
作り物だって思いたくなる、でもそれは紛れもない本物の手で、きれいな細い指を見るところ女性のもので。そうなるとさっきの女性が消えてこうなったのかという現実的にありえない考えが頭をめぐって。
もう何も考えたくない。
そこからの記憶は全然なくて、まるで夢みたいで、気付いた時にはまた私のいつもの日常が始まっていた。
昨日のあれは、やっぱり夢?でも、この目で見たものは奇麗に脳裏に焼き付いている。
手をもつ吉良さん。手首のほうからは血がまだ出ていて、なんかその手を持っていて嬉しそうだった。
あの人は手が好きなのかな、あれが夢じゃないならきっとそうだ。
ああ、そういえば吉良さんは私の手を褒めてくれたな、きれいだって。
だったら私の手も欲しいって思ってくれているのかな、ならあの女の手じゃなくて私の手をもらってほしい。
私の手を褒めているけど、私の手をもらわないのはなぜ?あの女の手のほうがきれいだったのかな、それとも親戚だから?
そんな遠慮はしてくれなくていいのに、あの人の手を愛でるあなたを見るほうが私としてはもっといや。
ふと、私は左手を見た。そして思いついた。
ああ、そうだ。だったら簡単な話だ。
ぐちゃぐちゃになった頭で、私はキッチンに向かった。
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