一日メイド罰ゲーム



「そして、一日が何とか終わったわ。」


「嘘はいけませんよ、嘘は。早くそのキャパシティーの限界を超えてフリーズしているのを何とかしてください。」


ユーリがちらりと見ると相変わらずヴァニラはフリーズしている。目も開いたまま、呼吸していないわけではないが本当に全く動かない。


「これ何とかするのって私の役目?ほっといちゃだめなの?」

「一応邪魔なので。ドアの前からどかすだけでいいのでお願いします。」


「何か雑用じみてるわね、メイドって。」


「メイド喫茶のようなことをしたいのならそうしましょう「雑用ってすばらしい仕事ね」そうですか。」


そう言ってユーリはヴァニラの隣に立つ。まだ固まったまま動かない。ユーリは正直死んだんじゃあないかと思っている。


「……と言ってもあれね、抱えるべきかしら?引き摺るべきかしら?投げ捨てるべきかしら」


「引き摺ったりすれば後が怖いですよ」


「そうね……。抱えるが一番かしら。」


そう言うとユーリはヴァニラの腕をつかむ。触れてもなお動かないとなると、相当さん付けと敬語は深刻なダメージを与えたようだ。


「待て、ユーリ一人では運べな……」


そこで言葉は途切れた。華奢なメイド服を着た少女が大の男を俵担ぎしているところを見れば誰でも言葉に詰るだろう。

彼女が吸血鬼であれ、何となく違う種族だと思っていたDIOはユーリにそこまで力があるとは思えなかったのだ。


「どうなさいました?DIO様」


「いや、何でもない……意外と力があるのだなユーリよ」


「ロードローラーを持ちあげるあなたと比較したら大したことありませんわ。」



全く重さを感じていないようで、ユーリは軽々ヴァニラを抱えテレンスにどこにやればいいと聞いている。


「とりあえず邪魔にならない所なら廊下に出しておけばいいわね。」


そう言いユーリは開いている手でドアノブに手をかけた。
が、それと同時にドアノブが動く感覚がする。

「……ユーリ?おはようございます」


「おはようございます。初流乃様、お先にどうぞ。」


「いえ、荷物を持っているんですからユーリが先に。」


「ありがとうございます」


そう感謝してユーリは部屋を出た。


「初流乃、何故動揺しないのだ」


「ここの人が突拍子もないことするのにはもう慣れましたから。」


平然とした表情でジョルノは言うと空いている椅子に座る。
廊下からは何かを投げたような音がした。多分あの担ぎ方からゆっくり下ろす方法が浮かばず投げたのだろう。


「ユーリに案外力があるのは知っていたか?」


「ええ、パードレをジャーマンスープレックスするくらいの力はあると思いますよ。」


「何言ってるんですか初流乃様、そんなに力があるわけないですよ。」


いつの間にか戻ってきていたユーリがジョルノの横で言うと、ジョルノは怪訝そうな目でユーリを見てからそうですかと言った。


「……できるのか?」

「やられたいのですか?ためしましょうか?」


「いや、いい。」


一日が終わるまでまだ遠いというのに、この調子で大丈夫なのか

何か起きやしないのか、DIOは少々心配に思うのだった。



「貴様ッ、なんて恰好をいやよくも人を放り投げてその格好でDIO様を誘惑するつもりかッ!?」

ようやく、今更、ヴァニラは復活し部屋に入るなりユーリを見て声を荒げて言った。
それも全くわけのわからないことを。

「言いたいことを全部言いたいのはいいですが何を言いたいのかまったくわかりませんよ。」


「その言い方だと放り投げることでパードレを誘惑してるみたいですね」


「わけわかんないわよヴァニラ」


そうユーリは言うとハッとして手で口を押さえる。
敬語を忘れていたと。


「5分延長ですよ。」


テレンスの言葉にうなだれるユーリを見て、また延びたとDIOは思うのだった。






次の日の夜


「……何故まだその格好をしているのだ、ユーリ」


「24時間延長って怖いと思いません?DIO様」


とことん、そう言うことはユーリに向いていないのだと改めて確信したのと同時に、仮に部下にした場合メイドにしようとしていたが、部下にならなくてよかったとDIOは思っていた。





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