一日メイド罰ゲーム



「で、負けたんだな」


「ええ、負けたのよ」


その後ユーリは秒殺という言葉の通りに負けた。それはもう完膚なきまでに。
ユーリは本当にメイドのように夕食(とはいえ現在の時刻だと朝食)の用意をし、用意をしているついでにDIOにこうなった経緯を説明した。


「確かに罰ゲームは人形じゃなかったわ。でも、一日メイドなんてね。」


ミニスカートのフリル付きエプロンのメイド服を渡された時、時が止まったような気がしたともユーリは言う。


「……まだユーリの人形を作り上げていませんし」


「そうそう、さすがに私の人形は作ってないと思ったから安心して勝負を受けてみ……」


そういいかけユーリが固まる。そしてすごい勢いでドアの前にいるテレンスのほうを振り向いた。

テレンスは表情一つ変えずに、夕食は以上ですよとDIOに言う。



「ちょっとまって、作ってないならわかるけど作りあげてないっていうのはどういう事?ちょっと、目をそらさないでちゃあんと答えなさい?」


「何を言ってるか全くわかりませんね。」


不敵な笑みを浮かべ、ユーリに言うテレンスに勝てる気がしない……いやもう問い詰めることさえ無理だろうと悟ったユーリはらしくない態度と表情をしていた。


「………DIO、こういうとき私どうしたらいいかわからないの」


「そのままのお前でいれば……いいと思う。」


「笑えないからその回答でいいわ。ありがとう……。」


「ユーリ、様を忘れてますよ「ありがとうございますDIO様」」



様付けというのは、当り前の事であったが今まで様付けでは一切呼ばなかったユーリからの様付けの呼び方にはなぜか鳥肌が立つほどの拒絶感があった。


「頭痛がする、は……吐き気もだ……くっ……ぐう……な、なんてことだ……このDIOが……気分が悪いだと?
このDIOがユーリに様付けをされて……鳥肌までたっているだと!?」


「紫外線照射装置でも持ってきてさしあげますわ、ご主人様」


「ッ!?いや、今のはジョークだ。」


言い終えた後にユーリのほうを見ると青筋立てて静かに怒っているところが見えたのですぐさま目をそらしてごまかした。

とりあえず、何事もなくこの一日が終わればどうという事はないのだと自分に言い聞かせ、DIOは食事を始めようとした。


「DIO様ッ!いかがなさいましたか!?またあの小娘が」


「こうも早いと盗聴器でもつけられていないかと心配になってきたぞ、アイス。」


と、思いきやいつものようにDIOに何かあればヴァニラがすぐに来る。


「流石DIO様馬鹿、センサーが内蔵されてるのね。……ちょっと待ってテレンス、ヴァニラってどの位置なの?ため口聞いたらアウトなの?」


そんないつもの光景を見ながら、ユーリはそういえばと思いだしたようにテレンスに訊く。内心、肯定してもらいたいと思いながら。


「一応彼は側近ですからね……様までとはいかなくてもさん付け敬語と言ったところでしょう。……なにこの世の終わりみたいな顔しているんですか」


「そりゃあこの世の終わりのようなことが起きているからよ。初流乃なら全然それで行けるのにあの子には多少の抵抗があるわ……」


テレンスの答えにげんなりしながらユーリは言う。さらに延長されて半永久的にメイドをしていたいなら抵抗のないようにやっていいといわれると、ユーリはずーんとさらに暗くなりながら、何とかやり遂げてみせなければと改めて思った。


「小娘ッ、貴様今度はDIO様に何を……ってなんだその格好は」


「おはようございますヴァニラさん、一日メイドを務めることになり、この格好ですが何かおかしかったでしょうか。」


その時、ヴァニラの中で完全に時が止まっていた。



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