MerryMerryX'mas



「はぁ、衰弱死させられるかと思ったわ」


「日光が平気なくせに何故あんなものが苦手なのだ?」


「日光もたいして得意でもないわよ。あなたほどじゃないだけで。


と、いうか十字架飾る吸血鬼なんて聞いたことないわよ!あなた本当に吸血鬼!?」


「うりぃ……さっき初流乃にも同じことを言われたぞ……」



十字架を撤去した廊下を歩く二人が言葉を交わす。

ユーリが引きこもった理由はクリスマスの飾りつけの一つとしてあった十字架。見ると死ぬ、などとまでは行かないが苦手ではあるらしい。


「で、クリスマスはまたお祭り騒ぎみたいな事をするの?ハロウィンみたいに。」


この飾りつけをするくらいなのだからそれくらいやるだろうと思いユーリは訊いた。


「クリスマスはあそこまでの事はしないぞ、飾り付け以外。」


「そう。ところでこの飾りつけはどうしたの」


「もちろんこのDIOが直々にやった。」


「暇人ね。ああ、だから室内なのね。」


「本当は外も……」


「そんなことしてジョースター達が来たら何事かと思われるわね。」


「だから止められたのだ」


って、本気でやろうとしていたのか。と突っ込みを入れたかったがやめた。


イギリス人がクリスマスの飾りつけに関しては本気を出しすぎるとは聞いていたが、まさかここまでだとはユーリも思っていなかった。


「今回のクリスマスは日本風にケーキも用意した。」


「あら、ケーキって食べないの?クリスマスに」


「プディングなら食べるがケーキは食べない。」


「へぇー……」



正直、暇だからと言って余裕でクリスマスしてていいのかともユーリは思ったがそこはつっこんじゃいけないところなんだろうと何も言わないでおいた。


「そういえば、ケーキはどうしたの?このへんでそんなもの売ってたかしら?」


「テレンスに何でもいいから好きに綺麗なのを作れと言っておいた。」


「適当な注文ね」


「怒られた……」


「でしょうね……」


その光景が普通に思い浮かんでしまったところ、ユーリはこの感じに完全に慣れてしまったと言えるのだろう。


そんなことよりも、綺麗に作れというところにユーリは疑問を持っていた。


それも、好きに。


「DIO、あなたにとっての綺麗なケーキって何かしら?」


一縷の望みをかけて、ユーリは訊く。

「色どりが鮮やかな物だろう!」


終わった。


絶対に終わった。


ユーリはまた棺の中にこもりたい衝動にかられた。

まず、DIOのケーキの認識がそういうものだったこと。


そしてなによりケーキを作るのがテレンスだという事。


ユーリはテレンスの料理が一度として不味いと感じたことはない。お菓子だってそうだ。

だが、これは別の問題だ。


綺麗に、を色鮮やかと認識していたらとんでもないものが出てくるに違いない。


「………」


逃げたいなどの衝動にかられながらもユーリは仕方なく、DIOについて行くのだった。




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