雨の日
「時を戻して、彼女を救うね……」
映画が終わり、ユーリはそう呟いた。
映画の内容は死んでしまう恋人を時を戻し、自分が死ぬことで救うという内容であった。
「どうあがいてもだめって時は駄目なのに。」
「ユーリは現実主義と言うやつか?」
「ロマンチックなのも好きよ?ただ、こういう話がどうもね……」
そう言うと、ユーリはスリープモードにしておいたDSを開いた。
そんなユーリを面白くないとDIOは思っていた。
「面白くない、っておもったでしょ。」
「何故わかった」
「あら、やっぱりそう思ってたの」
「かまをかけたな……」
ユーリがくすくす笑うとDIOは苦笑した。
そんなとき、DIOがユーリを見て止まった。
((……こんなことが、昔も…))
「DIO?」
ユーリは固まっているDIOを呼び掛けるも反応しない。
『ふふっ、最……に……しようとして…でしょ』
かすれて聞こえる声。それはユーリのものだ。
『そんな……はない、私はお前の事を……だからな』
そしてそれに答えるのは自分、DIOの声。
『嘘つき。でも……よ。私は』
古いテープを聞いているような、そして懐かしいような感覚。
だが、こんな会話をした記憶はDIOにはない。
「DIO、DIO−?」
「ハッ……ユーリ、何故こんな至近距離にいるのだ」
「どっちが近づいてきたと思ってるのよ、まったく」
ユーリが言うとDIOは離れる。
TVには次の映画が映し出され、しんとした空間に映画の音声と雨の音がよく響く。
「ユーリ、ひとつ訊いてもいいか?」
「何?」
「お前と私は、昔一度出会った事が「ないわ」」
即答。間をおかずに表情も一切崩さずにユーリは否定した。
((拒絶……か))
聞いてはいけないことだったのだということは理解した。
「やっぱり雨って嫌いだわ。」
「そうか」
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