兄弟
「嘘じゃないわ……私には外で寝泊まりすると言ったら止めてくれるような人なんていないもの…」
さめざめと泣きながらユーリは言う。
しかし明らかな嘘泣きである。
「その前に、言われてませんし。」
それに、もう嘘ってわかってますよ、と付け足す。
「まあ本当に、冗談なんだけど。」
「……一回暗黒空間にばらまかれてきてください」
テレンスがそういうとユーリはひどい、と言ってテーブルに置いてあった紅茶を飲みほした。
「今のが冗談と言うことは、君の部屋もちゃんとこの館にあるわけだ。」
ダニエルが訊くと、ユーリは首を横に振った。
「ないわ」
「もう冗談はいいです……YES…!?」
アトゥムを使い、ユーリをみると今度はYESと出ているではないか。
外で寝ているのは嘘だとは言え、この館には本当にユーリの部屋はないのである。
だとすれば、今度はどこで寝ているのかという疑問が浮かぶ。
「ほら、本当だったでしょ?」
くすりと笑うユーリ。
「じゃあ、本当にどこで寝ているんですか」
「DIOの部屋」
なんだ、DIO様の部屋でしたか。
そう返してテレンスは固まった。
即座にアトゥムをつかいユーリを見ても、それは冗談ではなくYES、と浮かんでいる。
「DIO様とは種族が同じなだけに話も合うのかい?」
「そうね、でも暗闇の中読書しているのは相変わらずいただけないわ。」
そんなテレンスはお構いなしに話を続けるユーリとダニエル。
すでに、ポーカーをやる気がないのか完全運任せの戦争をしている。
「あ、あとはこんな風にトランプしてるわよ。…ちょっとあなたの所ばかりにKとかQがあるけど気のせいかしら」
「運任せのゲームだから仕方ない。」
「ちょっと待ってください!なに勝手に話を進めてるんですか!?」
「あら、ようやく戻ってきたわね」
面白そうにユーリは言うが、テレンスはそんなユーリに少し苛立っていた。
「DIO様の部屋で寝泊まりしてるって言うのも初耳ですよ!」
「だって言ってないもの。……ちょっと!K四枚そっちってどういうことよ」
先程から負けているユーリはダニエルに抗議する。
「私の運が良いだけだろう。」
ダニエルはそれを適当に流す。
「イカサマしてるならこっちもやるわよ?「そんなことよりいい加減部屋から出ていってください!」だからここ以外部屋ないわよ」
結局手札のカードが終わるまで二人は続けていた。
「あ、そういえばテレンス、DIOがさっき探してたわよ。洗濯機はいったいどうつかえばいいのだ!とか言って」
「またあの方は…下手にいじって壊す前に行ってきます
…用が終わるまでには部屋を出ていてくださいよ。」
「善処しておくわ。」
部屋から出るテレンスにユーリはひらひらと手を振ると、またポーカーを始めていた。
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