兄弟
「そうね、仲の良い友人ってところかしら」
ユーリは手に持っていたカードを三枚交換し、見る。
まあまあね、とつぶやくと話を続ける。
「だってこの館の中では一番話が合うし、ね。レイズ」
そう言ってユーリはコインを上乗せする。
「それは意外だ、君もゲーマーってやつなのかい?」
話していた相手は、テレンスの兄ダニエル・J・ダービーだった。
何故館に彼がいるのかと言えば、近々来るジョースター一行の対策についてDIOと話していたからである。
そのあとにユーリと会い、暇つぶし、という名目でポーカーをしている。
「日本に居ればそうもなるわ。」
「日本と言えば、侍や芸者は居るのかい?コール
Kのフォーカードだ。」
「残念だけど、そういう人たちはもういないわ。ストレートフラッシュ、私の勝ちね。」
二勝二敗、勝負は拮抗していた。
「……吸血鬼の魂をコレクションに加えてみたいものだな」
「あら、これはただのお遊びでしょ?」
「気が変わったと言えば?」
ダニエルのセリフに、ユーリはだったらもうやめようかしらと言う。
ユーリはカードをテーブルに置くと、置きっぱなしにしていたため、少しさめた紅茶を飲む。
「冗談だよ。君をコレクションに加えるようなことがあれば少なくとも2人から制裁を受ける羽目になる。」
「二人、ね。」
「何をしているんですか、私の部屋で」
「「ポーカー」」
いつかもこんな光景があったと思いながら、テレンスはため息をついた。
「見ればわかりますよ。何故、私の部屋でわざわざやっているのかを聞いているんです。」
「だって朝食の間とか他の部屋はかなり散らかってるじゃない。」
「誰のせいですか、誰の」
「ヴァニラ」
挑発しているのはユーリだというのに、とテレンスはこっそり思った。
そう、ほとんどの部屋が毎日のように繰り広げられるユーリとヴァニラの他愛のない喧嘩のせいでひどいことになっている。
修復が追い付かないレベルで壊されているので、いい加減にしてほしいとこの館のものは思っている。
「まあ、あまり気にするな弟よ。」
「またフルボッコにされたいんですね、把握しました。」
「まて、今回は悪いことはしていないぞ!」
「まあまあテレンス、久しぶりに会ったお兄さんにそれは良くないんじゃあないかしら?」
兄弟げんかをはじめられても困るのか、ユーリはテレンスを宥める。
そんなユーリもテレンスは冷めた目で見ている。
「と、言うよりポーカーするだけならわざわざ私の部屋じゃなくても、あなたの部屋でやればいいでしょう。」
「私の部屋?この館にないわよ」
「嘘を言わないでください、だとしたらいつもどこで寝泊まりしてるんです」
「外」
「え?」
窓を指差すユーリ。
「新聞紙って意外とあったかいのよね……風除けとかにもなって」
「外で寝泊まりしてるんですか!?今まで一回も聞いたことのない事実ですよそれ!」
「女性がそんなところで寝泊まりなんかするもんじゃあない……テレンス、お前はこの館の執事だというのにそれを知らなかったのか…」
「いや、知らなかったも何も夜になれば彼女は急にいなくなりますし!それにいつの間にか夕方くらいにまたふらっと現れて…
って、やっぱり嘘じゃないですか!NOって出てますよ!」
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