終章 1ヶ月を待たず、異人転生計画から3日後、私はマスターの体で大広間でみんなを出迎えた。マスター代理が少女であることにみんな驚いていたが、何も言われなかった。それよりも全員が元の体に戻ることを希望していたことに驚いたのかもしれないし、早く元の体に戻りたかったのかもしれない。迷わずカプセルに入る。 異人転生計画はマスターが思い描いていたような形ではなかったけれど大成功だった。私には、松岡知奈自身もこの方がよかった。私は異人転生後みんながどうなったか見届けたくて、マスターに入れ替わりは数時間後にお願いしていた。 浩樹君は戻るなり大悟さんの肩をたたいて、大悟さんの片思い相手と仲良くなったことを話した。時々お昼を一緒に食べる仲になったとか。大悟さんはお昼を一緒に食べて仲を深めるらしい。大悟さん本人といえば、体が筋肉質になっていることに驚いていた。 大悟さんは浩樹君に練習ノートを見せた。受け取った浩樹君は不安がとれたみたいだ。彼はまたサッカーを続けると約束した。 冬香ちゃんと恵理子ちゃんは元の体に戻るなり、お互いに怒っていた。あの穏やかそうな冬香ちゃんも。 恵理子ちゃんは冬香ちゃんに、大事なものを全部諦めるくらいなら、全部やってみろと怒っていた。あと現代の最新技術をなめるなとか。冬香ちゃんは静かに頷いている。 冬香ちゃんは、恵理子ちゃんが家族に大事に思われているのを忘れないようと大声で言った。恵理子ちゃんは不貞腐れているようにも見えたけれど、何も言い返さなかった。残りは手紙を見るようにとだけ伝えていた。 みんなが帰った後、私はカプセルから自分自身の体に戻って、じっくり眺めた。改めてマスターと向き合う。 『これで本当によかったのね』 こうして聞いてみると、やはり人間ではないような神秘的な響きがある。 「ええ。私は自分の体に戻ってやりたいことがあるから。だから責任なんか考えないでマスターは今まで通りでいいんじゃないかな。それに神様の仕事なんて大変でこりごり」 『そう。私も会社員は十分』 「書類も書いて一通り体験できたね」 マスターは微笑んだ。体を入れ替えたからか、私達にとってはその会話だけで十分だった。なんたって、上司の不適切な言動についての書類を最終チェックしたのは他でもない私だから。マスターはさすが神様で仕事も完璧だった。 「でもいい体験ができたわ。ありがとう」 『私も』 「でも私がこの先辛そうにしてても、もう大丈夫だからね」 神様の仕事をしてみて、人の運命に介入できないことはわかったけれど、一応言っておく。介入できないのと、見てみぬふりをするのは違う。マスターがそんな考えではないことも知っている。 『元気でね、知奈』 「マスターもね」 いつでも見てくれてるのがもうわかっているから、私にとってそれ以上の言葉はいらない。 これからどうしようか。会社が変わるようなら続けてもいいし、新しく何かをはじめてもいい。休日ならできそうかな。しばらく休みをとってもいいな。でも私がやったことの結末は見届けたい。 神様になったからかもしれないけれど、何でもできる気がした。 これまでとは全く違う気分で部屋を後にした。日差しは穏やかで外の風はひんやりしていた。それでもどこか新鮮だった。 後書き 読んでいただきありがとうございました! 創作15周年記念企画、ようやく完結です! 5年もかかってしまいましたが、私としては5年かかっても創作開始記念日である今日に完結できてよかったという気持ちでいっぱいです* 毎日夜10分(大体過ぎてたけれど)創作してるのは、10代の頃ノートを布団の下に隠しながら創作した頃のようでとっても楽しかったです* 5年前は書きたかったことや、展開は違っていたんだろうし、これからこの文章に向き合うと変わるかもしれないけれど、これが今の私の答えです。 重いテーマをいかに読みやすく、それでいて軽くなりすぎないように書こうと努力をしてみました。 思った以上に明るくしたくてギャグ方向にはしってる気もしますが(笑) 終章はなんと、Gの章よりも先に下書きが書けました! あっさりしすぎて焦ってしまいました! さすがにGの章の下書きができてからつけたしましたが、そんなに多くはないとは思いましたが、500字ほど増えているのでそうでもないかなとも思います! 企画はじめた当初は、名前くらいの設定しか考えなくて、あとは書いていくうちになんとかなるだろうと思っていたら、やはり重いのですぐにはなんとかできる内容ではありませんでした。 それでも、5年年齢を重ねたからこそ、スムーズに書きたいことが書けました! 伏線を回収しようと読み返す前から回収できたものもあり、こうゆう展開を最初から書きたかったのではないかとしっくりきて驚きました(笑) 20年も創作していて思うのは、やはり自分でもここまで続けられると思っていなかったということです。 人でいうと、20歳ですよ! 20年前はまだ小学生で、友達の夢が憧れで自分も何か始めてみようと思ったのがきっかけでした。 仕事にしようかと悩む時期もありましたが、コンクールを試してみて、私が書きたいものを書きたいように書けることが最大の喜びであったことに気づきました。 創作関係とは違う仕事を始め、結婚もして、出産もして、どんどん次のステージに進んでいく中、理解してくれる人がたくさんいてくれることもあり、こうして続けることができています。 本当にありがとうございます! これからも少しずつ創作を進めていきたいと思います* 今後の目標は、『不思議の国のありさ』完結と10代の頃ノートに書いていた文章の完結です! 2024.02.19 |