誰も知らないつの物語


摩女


 ちかいみらいのおはなしです。あるところに一人の女の子がいました。

 みらいには『スマホ』というのがありました。それで身近にあったことや自分の絵をのせて、みんなに見てもらってハートをもらうというのがはやっていました。

 女の子がいつものようにスマホを使って絵をのせようとすると、急に胸がちくりとしました。

 前の絵をのせたところを見てみると、そこには摩女から呪文が書いてありました。意味の分からなかった女の子は、知らないふりをしていました。

 またある日のことです。女の子はまた胸がちくりとしました。スマホを開いてみると、そこにはまた摩女からの呪文が書かれていました。この前のよりさらに強力な呪文です。
でも、やっぱり意味の分からない女の子は、知らないふりをしていました。


 またある日のことです。今度はいてもたってもいらないくらい胸が苦しくなりました。スマホを開いてみると、また摩女からの呪文が書かれています。意味の分からなかった女の子ですが、摩女が嫌なことをしていることに気づきました。今までの摩女の呪文は全て呪いでした。

 女の子はスマホを閉じて、摩女を『ブロック』しました。そうすることで、摩女は女の子の写真を見られないはずでした。

 でも、摩女は知っているのです。女の子の居場所を知っている摩女は、どこからでも呪いをかけられることができます。いつでも女の子を苦しめることができるのです。




「これってこの前倒された魔女みたいだね。未来にも魔女っているんだ。これじゃあ何にも変わらないじゃん」

 姉の膝に腹を乗せた少女が、絵本の途中で頬をふくらませて言った。歳はまだ10歳にはならないくらいだろう。

「そうかしら。じゃあ、私たちと同じようにこの女の子も負けない方法を知っているはずだね」

「そうだね。しかえしに呪いをかけてもしょうがないって知っているんだもんね」


 妹の笑顔を見て、微笑み返そうとした時、ふと時計を見る。


「いけない! お見舞い行かなくちゃ」

「おねえちゃんが絵本を読むからじゃん」


 妹は文句を言いながらも置いてあった花束を持って、ドアを開けた。


 本来の結末を知らなくても、未来を知らなくても、彼女たちには物語の女の子が幸せになるのが分かった。



後書き

読んでいただきありがとうございました!!

今回は創作開始14周年で書こうとしていた中では、一番最初にプロットができて『魔女』っぽく書こうと決めていた文章です。

おとぎ話っぽく未来の話を書けたらおもしろそうだな、とか
過去の人が未来の人の話を聞いているってなかなか私の中ではない展開だな、とか
そんなことを考えながら書きました。

いつも以上に、いつもとは違う視点で言葉を選びながら、(こんな短いけれど)1時間ほどかけて創りました。

久しぶりのくせに新しいことばっかりやってるから、全く進まない!
ついには、後書きから書き進める始末……

創作14周年ということで、短くても1つ1つがとても(いろんな意味で)重い文章です。
また今週末にでも1つあげられればと思います*





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