ヘブンズパス

エピローグ 1



 ずっと、願いは誰かに、あるいは神に叶えてもらうものだと思っていた。
 俺達は最初から、自分で願いを叶えられるというのに。何かに叶えてもらうのを待っている、それが一番愚かなことだった。


 それから俺達は、今後のことを話し合った。俺達の意見は同じだった。天使と悪魔の戦いを止めたい。そのためにどうすればいいのか。

 彼らは多少異なるかもしれないが、誰かの強い思いから生まれる。その思いが叶わない飢餓感を満たすために互いを喰らうのではないだろうか。
 それを止めるためには、自分の思いを叶えようとすること。そうすれば、天使でも悪魔でも関係なく幸せになれるのではないだろうか。

 少なくとも、互いを喰らわなくても生きてはいけるのだから。



 それからも多くの天使と悪魔が生まれた。生まれるたびに、俺は悪魔に、ナズナは天使に同じことを言い聞かせる。


『自分の思いを叶えるために最善を尽くせ』

『必要があれば互いに協力しろ』

『間違っても何かを壊して願いや欲望を叶えようとするな。それでは何も叶えられない』


 そうしたところで産んだ人間の願いが叶うわけではない。叶わないかもしれない。それでもそれが天使と悪魔の生きがいになる。

 たくさんの天使と悪魔がヘブンズパスに行くことができた。神が増える度、俺達は産んでくれた人間を見守るように言った。中には、願いや欲望を叶えるのを見届けられたものもいた。

 しかし、中には、俺も知っていることだが、決して叶えられない願いや欲望がある。


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