ヘブンズパス

第三夜 1



 また夢を見た。また白い光の夢だ。以前とは少し違っていて、俺は光を追いかけていなかったし、光も逃げていなかった。光は俺の顔と同じくらいの大きさで、胸の下あたりをふわふわと浮いていた。それに俺は触れてはいけない気がした。悪魔にとって白いものは危険だ。得体のしれないものへの恐怖心からか、きゅっと胸がしめつけられる。俺のような悪魔がこんな小さなものを恐れるなんて馬鹿げている。それでも恐る恐る手を伸ばしてみたところで、目が覚めた。

 あれは、一体何だったのだろう。そして、俺はなぜ手を伸ばしてしまったのだろう。



「ヨル、おはよう!」


 既に窓は全て開いていたし、ナズナという獲物も元気そうだった。背中の翼はまた少し大きくなって、肩甲骨を覆えるかぐらいかだったのに、今では背中半分を隠せそうなくらいになっている。

 俺が背中を見ていることに気づいたのか嬉しそうに背中を向ける。


「私、もう少しで飛べそうだよね! そしたら一緒に飛ぼうね、ヨル!」


 こんな白いのが飛んでいたら目立つというのに、そんなことは考えもしないのだろう。俺が適当に返事をする前に、ナズナは食卓につく。


「今日もいい天気だから、お外で床屋さんごっこしようね!」


 こいつに警戒心は全くないので、外に出たら大騒ぎするだろう。力も少しずつではあるが強くなっている。何と言えば室内でできるだろうか。

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