2 鍵がたよりの秋休み 初めまして、とあいさつするその少女の声を、康介はよく知っていた。新学期が始まってやってきた転校生顔をした心愛は、帰りに僕を連れ出した。周りからヒューヒューとか、冷やかしが聞こえたが無視して、心愛の後に続く。「今大変なことがおこってるの。また一緒に来て康介!」僕はすぐ頷けなかった。 やっとの思いで帰還した康介にとっては、別世界のことなどどうでもよかった。でも心愛は手を痛いほど引っ張る。「その鍵は、あなたにしか使えないのよ!」「この鍵を使って何をしろって?」康介は手を振り払うと、ポケットから鍵と粘土を出した。「女王を止めてほしいの。支配させるわけにはいかない」 prev/next |