short novel

言葉も人を選ぶものだ〜nonfiction ver.〜





 iPodを外しても、好きなアーティストの曲はずっと頭の中でリピートしていた。



 メロディーがいいとか、好きな曲調なのはもちろん、私はこのアーティストの自作の歌詞が一番好きだった。


 もし同じ曲を渡されたとしても、誰もここまでの歌詞は書けないと思う。


 あるいはもし同じ歌詞だったとしても、ここまでこの歌詞を表現できる人はいない気がする。



 それは歌が上手いとか、声が綺麗とかそういうことじゃないと思う。




 何かこのアーティストさんには特別なものがあるのだろう。




 ふと『言葉も人を選ぶものだ』という言葉を思い出した。



 この言葉はこのアーティストにこそふさわしいような気がした。



 私にもそんな言葉を見つけられるだろうか?



 ふと私はそんなことを思った。



 いつか、言葉が選んでくれるような自分になりたいなと夕日が沈む紫色の空を見ながら思った。





 まだ頭の中では、同じ曲が流れ続けていた。



fin.

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