short novel

言葉も人を選ぶものだ







「みんながそう言うのも、もっともだと思うわ」


 言われている本人に直接聞いてみても、本人は何も悪く思っていないらしい。


「でもさ、みずきちゃん……」


 意外な反応に、私は調子がくるって何も言えなくなってしまった。



「かなちゃんは優しいのね」


 私が何も言えずにいると、急にみずきちゃんが言った。


「わ、私は優しくなんてないしっ!!」


私が照れてうろたえていると、みずきちゃんはいつもみんなが言う言葉を私に言った。


「バカねぇ」



 あっ……。分かった。


 何でつかみどころがなくて不安になるのか。



 みずきちゃんは、私を見て楽しんでいるわけでもなく、ただ見守ってくれているだけなんだ。



 それが分かると、何だか心がとってもあったかくなった気がした。いつも同じことを言われているはずなのに、おかしい。



「みずきちゃんは優しいね」



 私が言った言葉は、みずきちゃんにどう伝わったかな?……少しでもあたたかく聞こえるといいな。



「ありがとう」



 みずきちゃんは、いつもみたいににこにこ笑って答えてくれた。



言葉も人を選ぶものだ
いつも優しい彼女へ



fin.

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