short novel

名もなき自由





「……やっぱり、あなたは『ロクデナシ』だわ」


 しばらくすると、フォーがそう言って俺の頬に片手を当てて俺の顔を上げさせた。



「ねぇ、ロク。さっき生きることも死ぬことも自由だって言ったけれど、もう1つどんな人間にも自由なことがあるのよ」



 フォーは俺から目を離さないまま、小さく誰にも聞かせないとするかのように言った。




 俺はずっとフォーから目をそらさずに、じっと聞いていた。





 だけど、どんなに時間が経っても、どうしてフォーが俺と一緒に逃げてくれたのかは分からなかった。




名もなき自由
生きるも死ぬも、愛すも―ー



fin.

8/9

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