名もなき自由 「……やっぱり、あなたは『ロクデナシ』だわ」 しばらくすると、フォーがそう言って俺の頬に片手を当てて俺の顔を上げさせた。 「ねぇ、ロク。さっき生きることも死ぬことも自由だって言ったけれど、もう1つどんな人間にも自由なことがあるのよ」 フォーは俺から目を離さないまま、小さく誰にも聞かせないとするかのように言った。 俺はずっとフォーから目をそらさずに、じっと聞いていた。 だけど、どんなに時間が経っても、どうしてフォーが俺と一緒に逃げてくれたのかは分からなかった。 名もなき自由 生きるも死ぬも、愛すも―ー fin. prev/next |