short novel

名もなき自由




「……悪いけれど、フォーが一緒にいても時間の問題だと思うぞ」


 俺が言いにくそうに言うと、フォーはまた心底楽しそうに笑って言った。


「全く『ロクデナシ』ね。私があなたを殺させるはずないでしょ!」


 頭の足りない俺にだって、逃げるのが1人から2人に変わったところで自殺行為に変わらないのは分かる。……たとえ、そのプラス1人がフォーのような優秀な人間だとしても。


 なのに、何で、フォーは幸せそうな顔で、そんなことを口走るのだろう。


「じゃあ、こうしましょ。あなたは組織から逃げのびるための手伝いを私にさせて」

「ダメだ」


 俺が即答すると、フォーの表情は見たこともないくらい冷静さを失っていた。


「お願いっっ!! あなたのことを殺したくないのっっ!!」

「ダメだっっ!!」


 俺の答えを聞いたフォーは、地球がひっくり返ってもありえないことに呆然としていた。


「……何で? ……あなた、死にたいの?」

「違う!! 俺はフォーを殺したくないんだ!!」


 地球が爆発してもありえないことに、フォーは全く見当外れのことを言った。だが、俺の言葉を聞くと、だんだん冷静さを取り戻した。


 ……ようやく分かってくれたようだ。



 俺は安心するのと同時に、何だか悲しくなってきて目を伏せた。





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