short novel

名もなき自由




「私も……いくわ」

「えっ!?」


 俺が聞き返すと、フォーは少し怒ったように言った。


「私もついて行くって言ったの!」


 俺はフォーの言葉を聞き取ると、急に頭がグラグラ揺れたような気がした。


「バカかっっ!! 組織を脱走するってことは、死を意味するんだぞ!!」


 フォーは常に冷静沈着で頭脳明晰だったはずだ。何でいきなり、こんなことを言い出すんだっ!!


「だって、あなた1人だったらすぐ殺されちゃうもの」


 フォーは俺が怒鳴っても、何がおかしいのかニコニコしている。



 ……もしかして、俺が遠くまで逃げないように時間をかせいでいるのか?


 でも組織の人間が、俺みたいな下っ端にそんな回りくどいことをするわけがない。本当に俺を殺したいのなら、フォーに殺させるはずだ。


 俺は何だか夢でも見ているような気分になって、フォーに言った。





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