short novel

心は雪崩注意報




 年中通して暖かなこの街には、めったに雪が降らない……はずだった。





「あっ! また雪降ってるよ!!」

「やりぃーー!! 雪合戦しようぜ!」


 外では雪にはしゃぐ子供の声が聞こえてくる。


 私がその言葉に気になって窓から外を見れば、もう子供たちは走ってしまった後だった。



「また奴か!」


 代わりに、後から歩いてきた悪態をついている中年の男性の姿が目に入った。


 おそらくその相手は、今日も異常気象をもたらしている『彼』だろう。



 歩いていた男性が片手でさっと円を描くと、その男性の上だけ雪が止まった。




「君は雪が降っているというのに、ずいぶんと余裕だね」



 朝ごはん代わりのサンドウィッチを持ったまま、窓の外の雪を見つめていると、この店の店長である、お気に入りのカフェのマスターが話しかけてきた。





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