short novel

北風と太陽





「……誰?」


 王女はシャインから少し体を離して、風の通った方向を見つめた。そこにはシャインがよく知っている、仏頂面の青年がいた。



「……ノースウィンド」


 シャインに名前を呼ばれたのを無視して、ノースウィンドは聞いた。


「『北風と太陽』っていう異国の童話を知っているか?」

「……何で今、そんな話をするんだ?」

「ちょっと!そんな話する前に、私たちを助けなさい!!」


 甲高い声で騒ぐ王女の声はノースウィンドにはもちろん、シャインにも届いていなかった。


シャインは何かに憑かれたように、ノースウィンドだけを見つめていた。


 ノースウィンドを警戒するように勢いを増して迫ってくる炎に構わず、ノースウィンドは平然と答えた。




「今がその状況に似ているからだ」





「……どこが?」


 しばらく考えてもシャインには分からなかったようで、ノースウィンドに聞き返した。



「太陽役のお前には分からないだろうな。考えたことさえないだろうな」



 そんなシャインの様子を見て、ノースウィンドはどこかさみしそうに言った。





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