short novel

北風と太陽







「衛兵! 衛兵はいないの!?」



 城が火の手に囲まれる中、王女が助けを求めて必死に金切り声で叫んでいた。


 隣には、彼女の夫であるシャインがいたが、王女同様おろおろ歩き回っていた。



 王女が呼んでいる衛兵はもちろん、召し使いといった従者は王族を助けようと必死に逃げ道を作っている。


 しかし、どんどん勢いを増す炎になすすべもなく追い込まれている状態で、とても王女やシャインを逃がすことはできそうにもない。




 そうこうしている内に、ついに王女とシャインがいる部屋にまで炎がまわってきた。



「シャイン、助けて!!」


 衛兵が助けに来ても間に合わないことを知り、王女はシャインにしがみついた。


 だがいくら頼られようとも、シャインに何かできるわけでもない。シャインは自分たちの方に獲物を追い詰める肉食獣のようにゆっくりと近づいてくる炎をなすすべもなく見つめていた。





 その時、一陣の冷たい黒い風がシャインの横を吹き抜けた。





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