short novel

北風と太陽






「うわっ!!!」


 ノースウィンドが片手を動かすのと同時に、さっきまで走っていた看守の足が不自然に止まった。


 だが首は動くようで、何が起こったのか見回してノースウィンドを見つけると、驚いたように動きを止めた。



「約束だ。いや、賭けだったかな」



 驚いている看守を気にすることなく、ノースウィンドは言った。



「ふざけるな! どんな状況においても、看守が罪人を逃がすわけにはいかない!」



 看守がそう答えるのを聞くと、ノースウィンドはいつも以上に冷たく言った。


「お前が焼け死ぬまでここで足止めしていてもいいが……」

「分かった!! お前を逃がすから、私も逃がしてくれ!!」


 ノースウィンドの言葉を聞いて、看守は態度を一変させて叫んだ。すると、さっきまでどうやっても動かなかった足が嘘のように動いた。


 看守はそれに気づくと、ノースウィンドを逃がすことにためらうそぶりを見せたが、ノースウィンドが看守をにらんでいるのを見つけると、すぐさま服の裾から鍵を探し出した。


横からは相変わらず、他の罪人の叫び声が聞こえているが、看守にもノースウィンドにも届いていなかった。




 ……カチャ。




 ノースウィンドの牢の鍵が開くかすかな音が聞こえると、ノースウィンドは看守より先に通路を走っていた。





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