short novel

北風と太陽






 それから数日後、ノースウィンドは彼の予想通り、牢屋に唯一ある窓から赤黒い世界を見ることになった。



「出してくれ!! 焼け死んじまう!!」



 だがノースウィンドのように冷静な罪人は他には一人もいない。皆口々に外の強風に似た音に負けない大声で騒いでいる。




 しかし彼は牢屋にいて逃げられないというのに、慌てることなくただ静かに、牢屋の柱をつかんで何かを待つように通路を見つめていた。





「うるさい! 私は自分を逃がすので精一杯なんだ!!」



 しばらくノースウィンドが通路を見つめていると、看守が叫びながらこちらに向かって駆けてくる音が聞こえてきた。


 ノースウィンドはその音を聞くと、看守が自分の牢屋の前に来るのを見計らって、さっと片手を動かした。





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