short novel

時計屋未来店〜for only he ver.〜




 中に入ってみると、蛍光灯はもちろん、電球も光らしきものが何もないから薄暗かった。


 しかし、穴の開いた屋根から紫色がかった残った夕日の光が差し込んで、何とか周りが見えた。


 目を凝らして見てみると、そこには至る所にいろいろな種類の時計が並んでいた。


 それらは全て違った種類で形も異なった時計で、今にも建物の原型さえなくなりそうな外見に関わらず、まだ全部動いているようだった。


 だがそれらは、全て違った時を示しているのはもちろん、進み方が全て異なっているのだった。本当は止まっているんじゃないかと思うものから、目で追えないほど目まぐるしく時を刻んでいるものもある。





「いらっしゃいませ」





 私が時計に気を取られていると、店の奥からおじいさんの声がした。


 よく見ると、店の奥に誰かが座っている。



 私が驚いて何も言えないうちに、おじいさんは変なことを聞いた。





2/6

prev/next



- ナノ -