short novel

その名は未来




※ほぼ一人称の会話文・重め





 おや、珍しくお客さんだ。


 びっくりしないで。そっちじゃないよ。走ると危ないから……。ほら、転んだ。


 怪我はないかい?君を襲ったりはしないから安心してよ。言っておくけれど、転んだことは僕のせいじゃないからね。



 そっちじゃないよ。だから、そっちじゃないって。あぁ、何でそこで後ろ向いちゃうかな。そうそう。そのまま少し上を見てみて。



 見つかった?そう、僕が話しているんだよ。


 本が話すわけない?

 失敬な。君が知っている世界の本と一緒にしてもらっちゃあ困る。この紅の深さ。光沢。歴史と伝統ある……。


 えっ、夢?

 まぁそう思いたいならそれでいいけれどね、君はこの夢を目覚めても忘れないだろうね。



 次は何でここにいるのか?

 そんなこと僕に聞かれても。というか君は質問しすぎ。しかも答えを聞かないなんて、失礼にもほどがあるんじゃないか?

 それにその答えは、君にしか分からないことだよ。ああ、そんな不安そうな顔をしないで。



 じゃあね、この場所のことを話そうか。聞きたくない? 残念だなぁ。君がここにいることをみつけるヒントになるかもしれないのに。

 えっ、せっかくだから聞かせていただきたい? まったく、君ってやつは。

 うん、うん。うん、えーっ。しかたがない、そこまで僕のことを褒めてくれているのなら話そう。





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