short novel

白馬の王女





 放課後、私は学園長室へ訪れていた。

 あの時はびっくりしていて分からなかったけれど、あれは間違いなく、乗馬クラブにいる白馬の白ちゃんだ。



「おや、女子高生とは珍しい」


 私がノックしてドアを開けると、学園長は微笑んでいった。写真と遠くからしか見たことなかったけれど、近くで見ても感じが良い。


「何か問題ごとでも?」

「実は、馬のことでお話したいことがあって……」


 よく考えてみれば、ペガサスが学園にいたら、何か悪いことを考える人たちが利用する。ペガサスの伝説がこの学園には流れているし、お金儲けにも、実験にも使える。

 白ちゃんの身を考えたら、このまま放っておくわけにはいかない。


「あぁ、馬? ペガサスのことかな?」

「えっ、何でそれ知って……」

「さっきもう1人女の子を乗せて飛んでいたじゃないか」


 確かに、私は管理棟の周りを飛んでいたけれど……。


「近いうちに君は気づくと思っていたよ。実はね、うちの馬はみんなペガサスなんだ」

「えぇーっ!!」

「ただし彼らは非常に気高くてね、心優しい者に危険が差し迫っている時にしか現れないんだ」


『君はずいぶんペガサスたちに気に入られているようだね』


 学園長は微笑んでそう続けた。


「君が心配していることは、馬術クラブの何人かは知っているからそこまで心配することではない」

「嘘、だって先輩方そんなこと1度も……」

「では、君も何をすればいいかは分かったね?」


 私は頷く。ペガサスのことは、秘密にする。それが学園長の求めている答えだった。




 それから私と悠里には秘密ができた。悠里もペガサスには感謝の気持ちを感じているみたいで、時々厩舎にやってきて馬に話しかけたりなでたりしていた。


 あっ、あと照れくさいけれど……。

 悠里は時々私のことを『白馬の王女』と呼ぶようになった。そんなかっこよかったかな、あの時の私。



白馬の王女
優しい人には必ず救いが訪れる




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