short novel

白馬の王女






 話をまとめると、悠里はバレンタインに数人の芸能科の男子にチョコを迫られたらしい。悠里は後で勘違いされても面倒なのでチョコをあげなかった。

 それを逆恨みしたその男子たちが、悠里を連れ去ったらしい。


 場所は、管理棟の屋上。大人は多いけれど、管理棟の屋上は1番人通りの少ないらしい。



 私はとりあえず、外に出る。管理棟へは、1度校舎を出ないと入れないのだ。

 時間はそんなにかかってないけれど、悠里は無事だろうか。やっぱり屋上に行く前に、管理棟の大人に話しておいた方がいいかな。


 私は階段を駆け下りながら、考えをまとめる。


 でも、そんなこと大人は信じてくれる?そんな時間はある?しかも相手は芸能科の人間。この学園の広告塔にもなるかもしれないのに。

 同じ学園のはずなのに、なぜこんなにも扱いが違うんだろう。


 外に出ると、厩舎を通った。馬の鳴き声が聞こえた。

 私は足を止めた。確か、お昼休み前に餌の確認はしてきたし、柵も開けておいたはず。なぜ鳴いているのだろう。

 誰か入った?最近不審者の話も聞く。私は悠里と馬の間で迷った。


 その時黒い影が私の頭上を通った。大きな鳥のようだったけれど……。

 再び前で馬の鳴き声が聞こえた。私が前を向くと、そこには白い馬が一頭立っていた。

 白い馬というだけだったら、何も珍しいことはない。だってこの学園の馬は全て白いから。


 その馬の背には、白い大きな翼が生えていた。しかも、この顔、厩舎にいるはずの白ちゃんに似てる……。


「嘘……」


 ペガサス伝説は本当だったのだ。私はペガサスに駆け寄る。


「私の友達が危険なの。お願い! 屋上まで飛んで!」


 後から思ってみれば、ペガサスであろうとも馬に日本語が通じるわけがないんだけれど、私は必死で話しかけた。


 ペガサスは横を向いた。飛び立ってしまうのかと思ったら、ペガサスは自分の背中を向いた。


「『乗れ』ってこと?」


 ペガサスは頷いた。間違いない、私の言葉が分かる。


 私はペガサスの背中に翼に気をつけながら乗った。


「わっ、ちょっ!」

「ヒヒーン」


 ペガサスは私が乗ると、前足を大きく振り上げた。1度鳴くと、次の瞬間には私は空中に浮いていた。





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