short novel

白馬の王女




 ある人曰く、将来大金持ちと結婚できるとか。ある人曰く、カップルでそれを見れば別れることはないとか。ある人曰く……。

 何はともあれ、そんな恋愛の噂ばかり。確かに、神様に頼りたくなる気持ちも分からなくないけれど……。


「あっ、悠里!!」


 私は廊下を曲がろうとしている親友を発見して走る。


「あっ、萌!」


 悠里は私を見つけて手を振ってくれた。今日もキレイ。悠里は長いストレートのさらさらストレートの美人の芸能科の優等生。1年生なのにもうオファーが途切れることなく来ている。

 ということで、学校も休みがちだし、休日もいつも忙しいからなかなか会えないんだけれど、テレビではいつも悠里の出ているCMが流れる。


「今日は珍しいね」

「萌だって、今日は馬のところじゃないのね」


 悠里はどんなに仕事が重なっていても疲れた顔をしない。勉強もクラブ活動(合唱部)もさぼったことはなかった。


「うん。今日はもうご飯あげてきたから」

「そっか。私も行きたかったな」


 悠里は普通科の私にも、普通に接してくれる。いつも笑顔でいつも明るい。そして何よりも馬に優しい。

 やっぱり、美人な人って性格もいいんだなっていう例。



「今日は1日いられるの?」

「午後から仕事入っちゃって。今度はモデルの仕事が来てるの」

「すごい!!」


 しばらく会わない間に、悠里はさらに仕事の幅を増やしていた。今度は雑誌でも悠里を見られるようになるんだ!それってすごい!


「萌はどう?馬に乗って走れるようになったの?」

「うん!春の大会があるからね!」

「見に行けるといいな〜」


 悠里は少し寂しそうに笑った。


「今日は午後から仕事なら、お昼は学食で一緒に食べようよ!」

「そうね。じゃあ、芸能科の食堂で待ち合わせしましょう」

「うん!」


 そこで授業のはじまりを告げるチャイムが鳴った。



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