short novel

二万年後の未来へ







 それから一万年後、彼女が一日一滴欠かさず降らせた涙は、砂漠に大きなオアシスを作っていた。





「せっかくだから、川を作ろうと思うの。どう思う?」



 背中に大きな手のひらを感じて、彼女はその相手の胸に顔を埋めながら問う。



「二万年ぶりなんだから、第一声はもっとまともなことだろう」

「まともなことよ。一万年も湖を作っていた者からしたらね」

「そういう意味じゃなくて……」


 しっかりと自分の背に腕をまわされていることから、彼はそこまで不満に思っていないようだ。



「だって、生死の境目のたった一度の告白に、二万年後に答えろなんて、ちょっと特殊すぎるんじゃない?」

「そううだけれど……」


 今度はずっともごもごにしか聞こえなかった内容が、彼女のすぐ耳の近くで囁かれた。





二万年後の未来へ
何が未来を救うことができるのだろう




fin.

4/5

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