short novel

憧憬





 数年後、白いローブを着た女性が芝生を過ぎる。短い赤茶色の髪は、ところどころ跳ねている。

 その後を、背の低い黒い三つ編みの少女が追いかける。


「先生! 私、ここが分からなくて!」

「そういえば、分からなそうな顔をしていたものね」


 駆け寄ってきた少女に、女性は微笑んで答える。


「何で、分かったんですか?」

「さぁ、なぜでしょう?」


 少女は不思議そうな顔をしている間に、女性は答える。


「魔法というのは、人を幸せにするものなのよ」

「でも、私、勉強分からなくて……」

「あなたが笑顔でいれば、そのうち分かるようになるわ」


 少女は首を捻っていたが、女性はもう歩き出していた。



 数年経って成長した女性ことアンネは、人を幸せにする魔法の答えを自分で見つけた。

 そして今では、憧れだったサリアに代わって、自分でこの答えを広めようとしていた。



憧憬
誰もが素敵な魔法使い




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