short novel

憧憬




「失礼します」


 アンネは心の準備をしたかったが、青年はもう扉を開いていた。


「ご苦労様、ペオ。お待ちしていましたよ、アンネ」


 アンネを導いた青年の名前よりも、アンネは目の前の女性に意識を持って行かれた。


 そこにいたのは、30代ほどの美しい女性だった。金髪の長い髪はアンネの記憶通りであったが、今でははっきりと顔が見える。

 小さな顔に整った鼻梁。なによりも、澄んだ空を映したような双眸が美しい。


「できれば、あなたが魔法を学ぶ最低条件を満たすまでは見守っていたかったのだけれど」


 サリアはそう言って立ち上がる。


「あなたは大切なものを見逃そうとしてます。それを放っておくことはできません」





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