short novel

憧憬





 少女は手に持っていたペンを止める。もう何度も解き直しているが、答えは出ない。インクがところどころ滲む羊皮紙からペンを離す。


 少女は教科書に顔を埋めて、また子供の頃のことを思い出していた。





『いい?魔法というのは人を幸せにするものなのよ』


 草原で女性の声がする。それと同時に金髪の髪と白いローブが風を受けて揺れる。

 太陽の光の影響で、少女はその女性の顔を見ることはできない。しかしその声が優しかったということはよく覚えている。


『じゃあ何でたくさんあるの?』


 少女が聞くと、女性は笑う。


『人の幸せはね、人それぞれなのよ。だから全ての人を幸せにするには、たくさん魔法を勉強しなくちゃいけないのよ』

『私、大人になったらみんなを幸せにできる魔法使いになる!』


 少女がそう言うと、少女の頭に女性の手がのる。


『あなたはきっと良い魔法使いになるわ』





 少女はそれから数年、人を幸せにするために少女は魔法を学び続けている。





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