short novel

Mr.ビッグ・バン




 現在地球上では、彼の本名よりも彼の名前の方が知れ渡ってしまっている。彼の本名を知らない者でも、そのあだ名を耳にすれば、震え上がるとか何とか。

 冗談だろ? 震え上がるのは地球外生命体だけにしてくれよ。


 なんて俺の冗談は人間には通じないわけで。もしかしたら、その意味の言葉は人類に通じない言語なのかもしれない。おかしいな、日本語のはずなんだけれど。



「ほら、よく言うだろう?『敵を倒すにはまず味方から』って」

「それ、”敵を欺くには”だから。味方倒してどーすんだよ」


 現実を知ってわざと言っているのか、何なのか、俺には分からない。だが、親友ならば親友として返答するのが望ましいだろう。

 もしかしたら彼のことだから、”敵を倒すには自分から”とか言いだしかねない。


「あれ、そうだっけ?」


 目の前でヘラっと笑ってしまうのが、こいつの良いところみたいな悪いところで、俺の気に入っているが気にくわないところだ。



 本名、郷田優(ごうだまさる)は俺の10年来の親友である。




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