short novel

VS バレンタイン





 俺はちゃんとお礼を言えたのだろうか?気がついたら夕日が半分ほど沈んでいて、1人で校門に立っていた。

 チョコを渡せたことが夢でなかったと知らせたのは、手に残っていた別のチョコの入った袋だった。



「ただいま!」

「どうだった?」


 俺に『お帰り』を言う前に、姉貴は目をキラキラさせて聞く。


「お返し、もらった」

「良かったじゃん!」


 片言で答えると、姉はさらに嬉しそうに目を輝かせる。


「義理だけれど」

「でも、もらえて良かったじゃん。ホワイトデーにもこれで渡せるね」


 あっ、そっか。バレンタインとの戦いは第二幕があるのか。そのときは、もっと装備を増やしておこう。


「で、連絡先くらいは聞けたの?」

「あっ……」

「卒業までには聞いておきなさいよ」

「でも、がんばったね」

「えっ?」


 俺が自分に失望していると、姉が笑った。


「バレンタインに頑張ったから、きっと後からご褒美がもらえるよ」


 姉の言葉は意味不明。おかしいな、俺ら姉弟のはずなんだけれど。姉弟なら、その恋愛スキルを俺に少し分けてほしい。



 とりあえず今年俺は、バレンタインは待っているものでもなく戦うものでもなく、味方につけるものだと学んだ。





VS バレンタイン
とある少年の恋愛戦闘記




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