VS バレンタイン 「あっ、3組の佐藤君だよね」 ターゲットは俺の名前を覚えていてくれたらしい。それだけで、目の前まで真っ白になりそうになった。 「あっ、これ私にくれるの?」 天使は優しい上に察しがいい。まさに最高の女性である。 「あぁ。えっーと、これ昨日作ったんだけれど、上手くできなくて……」 「佐藤君」 急に名前を呼ばれて、俺はやっと顔を上げた。そこには夕日を味方につけて、最高の笑顔を浮かべた女性がいた。 「ありがとう」 モナリザの笑みの良さは、俺には分からない。というか、一生理解できないと思う。 バレンタインからの嬉しい奇襲はまだ続く。 「これ、余ったから良かったら食べて」 目の前には、ピンク色のハートのついた包み紙。義理だってことは当然分かっているけれど、俺は文字通り放心した。 prev/next |