short novel

VS バレンタイン




 しかし、敵の奇襲作戦に俺は苦しむことになる。


 動悸が激しくなって、不安がどんどん胸一杯に広がる。渡すところまでは考えていたけれど、何て言えばいいんだ?

 いやいや、俺、落ち着け!俺は昨日ユブネを習得したんだ。怖いものは何もない!

 渡そう。うん、とりあえず、渡すことだけ考えるんだ。



「やっぱり、友チョコが一番楽しいよね!」

「あさっぺは料理上手だから、食べるの楽しみ!」

「そんなことないって」


 ターゲットと友人数人確認。距離、100メートル。

 会話から、他の男にチョコを渡した形跡はない。俺は足を1歩前に出す。頭はとっくに真っ白。

 いいじゃないか、渡すだけなんだから。告白なんてもったいないこと考えてない。俺の戦いを食べてもらって望む場所で最期を遂げられるなら、それだけで満足さ。



「すみません!」


 俺はなるべくいい奴を装って、ターゲットと接触した。頭が真っ白なら、心まで真っ白にすることは容易い。





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