short novel

VS バレンタイン





 ある人曰く、行動すれば何かは始まる。

 そんなことを思い込んで、何とか時間を持ちこたえる。こんなことならば変装道具を買っておくべきだった。



 とりあえず、朝から校門で待ち伏せしてみたが、なかなかターゲットは1人にならない。

 あとは違うクラスだから休み時間か放課後しかチャンスはない。

 あんまりやりたくないけれど……。1人になった時とか?そこまでストーカはしたくない。


 俺は最終決戦をターゲットが校門を出るまでとした。





 それから内心穏やかでないまま普通に授業を受けて放課後まで過ごした。先生に集中的に指されたから、普通ではなかったけれど。


「さっきの授業の田端さ、絶対今日チョコもらえないから八つ当たりしてるんだぜ」

「絶対そうだろ。モテる奴ばっかり指してたぜ」


 会話飛び交う廊下を抜けながら、俺は校門へ急ぐ。


 バレンタインから逃げるように足早に買える男子生徒に混ざり、俺は朝見つけておいたポイントへたどり着く。

 変装道具を買っておかなくて良かった。これで怪しまれなくてすむ。


 あとは、ここで待って、渡すだけ。必殺、待ち伏せ! バレンタイン、俺の勝利だ。





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