short novel

VS バレンタイン




 だがチョコが完成するまではまだ、バレンタインとの戦いは序の口である。


「で、どうやって渡すか決めたの?」


 ハートを作って焼くと、真ん中がひび割れしてしまうクッキーを作りながら姉が言う。


「あっ……」


 絶句。さすが、優勝候補は違う。


「まあ、逆バレなら不意打ちだろうからそこまで呼び出しには苦労しないだろうけれど。みんなバレンタインで他人に警戒薄くなってるからね」


 謎の分析をしながら、姉はまた割れたハートを増やしていく。


「まぁ、呼び出せるかどうかね。我が弟よ、男の見せどころよ」


 とっさに膝をついて、『ははーっ』と言いたくなったのは永遠の秘密である。





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