short novel

9つの真実と1つの虚構




「好きな子に告白できないから?」

「うん。それもあるけれど……」

「それで?告白したいの?」

「うん」


 何だか他人事だと思えなくて、話を聞きたくなった。私の気持ちはどうでもよくないけれど、とりあえず二の次で。


「じゃあ、もう告白しちゃえばいいじゃん。そこからだよ」

「あぁ、もう!お前、いい加減察しろよ!」

「だって、告白したいって言ったじゃん。それって嘘?」

「……」

「それとも、察してほしいっていうのが嘘?」


 彼は、やっと少し顔を上げてくれた。その顔は少し落ち着いている。


「察してほしいっていうのが嘘」

「うん。じゃあ、告白しなよ」

「他人事だと思ってるだろ?」

「まさか。大好きな人なのに?」

「お前誰でも大好き大好き言ってるだろ」

「みんなと同じ意味じゃないよ」


 いつもの私たちの関係になったのが安心して、私は少し核心に近いことを口にした。


「じゃあ、どういう……」

「告白したいんでしょ?私が告白していいの?」


 私がそう言うと、彼は耳を赤くした。最近知ったけれど、私の周りの男の人は、照れると耳だけ赤くなる。私がそれだったら髪でごまかせるのに。


「好きだ」

「残念。私は大好きなの」

「俺だって大好きだ」

「なっ……」


 最後まで私たちらしい展開に、私は少し安心していた。


 頼んだ紅茶は冷めていたけれど、私の心は温かかった。





9つの真実と1つの虚構
分かりやすく伝えたくない自分と
全く分からない相手





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