short novel

PROLOGUE







「しまった!!」



 青年がそう叫んだ時には、すでに目の前には目を焼きつける光芒。青年がもう終わりだと思った時、それは起こった。





「マジック・ファイア!!」


 少女の切羽詰まったような大声と同時に、両手ほどもある炎の球体が青年の相手へと向かう。



 フードを被っていて表情はよく分からないものの、少女からの攻撃を全く予想していなかったようだ。短い叫び声を上げ、間一髪のところでよけた。



 そして闇の中へと消えてしまった。





「大丈夫っ?」


 少女が青年のところへ駆け寄る。彼女は左手に灯を持っていて、青年の体をぼんやりと照らし出す。怪我はしていないようだが、とても危ない戦いだったのか、疲れ切っていて目が虚ろだ。


「大丈夫だよ」


 青年は立ち上がると、灯を少女の手から取った。


「あっ、疲れてるから私持つって!」

「いいの」


 灯に映し出された少女の姿は、小柄でくせっけのショートカットの茶色の髪と、同じく茶色のぱっちりした目が印象的な少女だった。



 しかし右手には、可愛らしい外見には似合わない彼女の身長の三分の二ほどもある、厳めしいとさえ思う、先端が何重もの輪になっている不思議な形の杖を持っていた。





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