short novel

真実を探す男




「君はある真実を教えてくれたが、それは証明できていないから真実とはいえない。真実となるものは、いつもどこでも存在できるはずだ」

「そうね」


 手が気になってあいまいにしか返事ができなかった。


「だから、証明するために一緒に来てくれ」

「えっ?」


 びっくりして彼の目を見ようとすると、彼の瞳が見えた。



「ここから一度出てみないか?君はこのビルを建てている時点で、外に出る準備をしてきたんだろう?」

「……一緒に行ってくれるなら、考えてみるわ」


 私が目をそらして答えると、顎から手が離れて、頭をなでられた。そこまでなら良かったのに……。


「いい子だ」

「なっ、子ども扱いしないでよ!」

「そんなつもりはない。かわいがっただけだ」

「うっ……」


 私が絶句しても、何がそんなにうれしいのか彼は満足そうに私の頭をなでていた。


「もっと他の方法があるでしょ!私は子供じゃないの!」


 その顔が反則だったので、とりあえず反論したら、思わぬ答えが返ってきて、私は反論したことを後悔することになる。


「そのうちな」



 私が見とれていると、私の手を繋いで彼はビルの外を出た。


 まったく、私は『考えてみる』としか言っていないのにずいぶん強引だ。悪い気はしないけれど。



 いつの間にか、黒一色だったはずの彼の服の胸元には、白い花の刺繍が見えた。



真実を探す男
その後少女と共に真実を証明する旅に出た




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