short novel

真実を探す男




「べ、別に大丈夫だから!」

「そんな風にはとても見えないが」

「あんたが優しいからでっ!」

「もう全て分かっているから何もいわなくていい」


 何か言い返したかったのに、声にならない声しか出なくて、悔しいから空いた両手で彼の背中にしがみついた。





「別に醜いなんて思っていない」


 彼が私が落ち着いてきたことに気づいて、言った。

 ここはとても安心するから、そんなに長い時間は経っていないのかもしれない。


「でもこのビルの中では、あの外にある花は存在できない」

「だからといって存在がなくなるわけじゃない」

「そうだけれど!」


 その後の言葉を言う前に、彼は少し体を離して私のひどいだろう顔を見た。顔を背けようとしたら、その前に顎をつかんで固定された。


「俺に真実を教えるといった割には、ずいぶん弱気だな」

「私はこの世界を守るために外界と心を閉ざしてしまった。
それは、そうしなければ私の世界が存在できないことを分かっていたからよ」

「それはずいぶん早計だな。君はこの世界に他人を入れている時点で、世界を完全には閉じきっていない」



 そう、彼の言うとおり、私たちがここで出会ったのは偶然ではない。

 だからといって、必然でもない。誰でもよかったわけでもない。





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