真実を探す男 「1階は応接室になっているから、ここの方が話しやすいでしょ」 私が話しかけたのを無視するところは相変わらずのようだ。何も言わずに辺りを観察している。 「何階まであるんだ?」 「屋上まで」 「……答えになっていない」 「あら、そう?」 「どちらにしろ、あなたを連れてこれるのはここまでよ」 「……そうか」 彼はまだ私の手をつないだままだった。もしかしたら、彼には多くのことが分かっているのかもしれない。 ありえない。 まだ会って間もないのに。涙をこらえながら、私は彼の沈黙を守っていた。 「ここに連れてきたということは、何か伝えたいんじゃないか?」 しばらくして、彼は私に聞いた。 「何か言わなければ伝わらないの?」 「じゃあ、俺の話を聞いてくれるか?」 「えぇ」 ここまでしか彼を連れてこれないのだから、せめてあと数分の彼の傍にいる間は、綺麗なままの自分でいたかった。 prev/next |