真実を探す男 「……それで、どこまで行く気なんだ」 私が歩いていると、後ろから無表情な声が聞こえた。 「えっ?」 いつの間にか私の手を引いていた彼は、後ろで私に手を引かれている。 「どこまで行くのかと聞いたんだ」 「私の真実がある場所まで」 「どこまで歩いても同じ場所しか見えないんだが」 それもそのはず。私の世界はずっとピンク色のお花畑で占められているのだから。 「その服で居づらいなら、ピンク色の服でも着る?」 「先を急いでいるのだが」 彼はそれだけ言って、言葉を口に出すことを止めた。この無愛想はしゃべる言葉も最小限に抑えたいらしい。 だから私も最小限で答える。 「知ってるわ」 「君も急いでくれと言わなければ理解してもらえないのか?」 「あなたが急いでいるのと、私が急がなければならないのは別でしょ。私に急いでほしいというのはあなたの希望にすぎないわ」 「どちらも俺の希望に変わりはない」 「後者は私の希望と重ならなければ達成されることはないわ」 「君は俺のために動いてくれてるんじゃないのか?」 私の足が急に前へ進めなくなった。どうやら彼には、もっと真実が必要らしい。 「あなたが探している真実は目に見えるものなの?」 「……分からない」 彼が探しているものを口にすると、彼は元の寡黙な男に戻った。私は前に進めるようになったので、また前に進み始めた。 「しかし、どこにでもあるはずのものだ」 黙ったていたと思っていた後ろから声が聞こえた。 「じゃあ、あなたが見つけられないだけでここにもあるのよ」 「君は知っているのか?」 「私が知っている真実は1つしかないわ」 「そうだったな」 その声が何かやわらかみを持っていて、私はその理由を知ろうとしたが、男は元の無愛想に戻ってしまった。 prev/next |