short novel

擬装




「嘘つくの下手だなぁ」


 相手が言った言葉がそれだけだったなら、私はそっぽを向いてるだけでそれ以上失態は続けないはずだったのに……。



「そういうところ好きだよ」

「はっ?」


 さぞかしびっくりした顔をしていたはずなのに、次に相手が言ったことはさらに不可解なことだった。


「ねぇ……。キスしてもいい?」

「何でそうなるの?」


 周りに人がいないとはいえ、ここはカフェ。人目がなくてもそんなことをさせるわけにはいかなかった。

 たっぷり時間をかけて気づかれないように、すぐに逃げられるように相手から離れる。



「嫌だったらしないから」

「当然よ」



 あたしがきつく言い返しても、相手はにこにこしているだけだった。


 ここであきらめてはいけない。私にはあと何分か後には、最近新しく付き合い始めたイケメンとデートするんだから!



 そこで手口を変えてみた。





4/6

prev/next



- ナノ -