short novel

うたかた





「でも、同じ仲間とはもう二度と水泳ができないんだよ?」

「じゃぁ、そんな仲間なんていない方がいいよ」

「えっ?」


 思ってもいないような返答に、私は聞き返すことしかできなかった。


「頑張らなくっちゃいけない時に足引っ張ってる奴なんて仲間じゃないよ。あきらめちゃう夢なんてただの思い込みだよ。あたしたちの目標はそういうものじゃないでしょ?そんなこと言って今までのあたしたちに対しても、自分に対しても悪く思わないの?」

「……」


 前からはっきり物を言うことは知っていたが、ここまではっきり言われるとは思っていなかったので、私は言葉につまった。




 しかし私にとって、それはどんな言葉よりも確かな答えで、私は無意識の内に微笑んでいた。




「そうだね」



 そして一層、この人と水泳をやっていきたいと思った。





 その思いも儚く消えてしまうものだったとしても、だからこそ今の私を、なによりも強く突き動かすものだった。





うたかた
あるはじまりの物語



fin.

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